
原稿が完成すると気になってくるのが本文以外の「体裁」に当たる部分です。
ここでは「表紙」に関することを解説していきます。
◆募集要項で要求されているなら付ける
まず募集要項を確認して表紙に言及されてるかをチェックしましょう。
表紙について何も述べられてなければ、必須ではないです。
いかに表紙が立派でもそれだけでは入選は左右されず、主催者側が見るのは作品です。付けなかったから落選するということはないので自己判断となります。
元から「表紙」の規定は賞によってもばらばらで専門家の間でも意見は分かれます。逆を言えば明快に「間違い」とも言えないのであまり神経質になる必要もありません。
表紙があるメリットは、応募原稿としての体裁がよくなり、また選考過程において整理しやすいといった点です。
応募者が多数にのぼる文学賞では原稿をさばくだけでも一苦労になります。
表紙で原稿を区別できると扱いやすくなるわけで、そうした実用的な理由もあります。
一般的に綺麗で扱いやすく、区別整理もしやすい原稿というのは印象が良いものです。
マナーとしても付けた方が親切になるのは間違いありません。
募集要項で要求されているなら付けて、そうでない場合は自分の好みで付けておこうぐらいでいいでしょう。
◆表紙のレイアウト
タイトルと名前のシンプルな表紙ならば、用紙の中央に大きめのサイズで作品のタイトルを書き、その左下に氏名などを記す形が一般的です。
もし表紙に住所・電話番号など含めた詳細な情報を記載するように求められている場合は、バランスを考えて書きましょう。
表紙の右前半に大きめのサイズでタイトルを書いて続いて氏名、左側後半にその他の詳細な情報を盛り込むと見た目もよくなります。
※募集によっては、原稿前半にタイトルと氏名といった規定があったり、タイトルの文字サイズまで指定されるケースもあります。
※横書きの表紙の場合は左右を上下に変えてあてはめてください。
◆表紙には何を書くべきか
簡単な形式だと「作品タイトル、名前、応募部門」程度で済みます。
これに「400字詰原稿用紙での換算枚数や総ページ数」や「受理番号」などが加わることもあります。
その他の詳細としては住所、電話番号、性別、職業、メールアドレスなどが大体どこでも共通しています。
賞によっては簡単な学歴・職歴・応募歴・受賞経験などを求められるケースもあるでしょう。
こうした詳細情報については、全てをまとめて表紙に記載するのと、タイトルなど以外の情報は別紙にまとめるやり方があります。
これは見栄えや個人情報保護の兼ね合いもありますが、「選考の公平性」を保つために個人を特定して不正なえこひいきなどができないようにするためにも行われます。
基本的には募集要項に求められている分を、過不足なく書きましょう。
ワンポイントテクニック
【特殊な読みには振り仮名】
本名・住所などで読みが難しいとか、誤読されやすいものはルビを振っておきましょう。
また凝ったペンネームや独特の作品タイトルの場合も、選考する側のことを考えて振り仮名を付けておけばいらぬトラブルや誤解を避けることができます。
【求められてなくても入れる情報を決める】
場合によっては出版社は複数の文学賞を公募しており、何百、何千の応募作品が送られてきます。その中で表紙に「第〇回 〇〇賞応募作品」「〇〇賞 〇〇部門応募作品」とあれば判断しやすく、原稿整理でミスも少なくなります。
他にも原稿用紙に換算した時の枚数や、長編などで総ページ数などもあれば分かりやすいです。
現代では求められてなくてもメールアドレスを記載してもいいと思います。主催者によっては受理の通知や合否連絡、入賞後の実務的なメールをしてくれるところもあります。
表紙を無駄に豪華にする必要はありませんが、こうした実用的な気遣いは現実的なメリットがあるので積極的に記載してもいいでしょう。
【テンプレートを作っておく】
表紙のテンプレートを作って保存しておけば何かと便利です。
原稿執筆が当日締切ぎりぎりとなって、郵便局に向かう前に表紙を思い出し大慌てとなると大変です。
普段から必要な情報などをまとめてタイトルの部分だけ空白にしておけば、色々な投稿先にも使えます。
複数のテンプレートを準備しておいたり、暇な時に文面を洗練させておけば、慌ただしく不満足な出来で出すことも避けられるし、出す時にプリントアウトするだけで済みます。
タイトルが決まってる場合は執筆前に表紙だけ先に印刷しておいても効率が良いでしょう。
◆表紙にページ数は入れるか、カウントするか
基本は表紙などにはノンブルを入れません。本文から1ページにカウントするのが常識的です。
ただ表紙にまでページ数が入ってるからといって落選することはないでしょうが、表紙や別紙の経歴などもページ数にカウントするかについては多少議論があります。
本文のページ数が規定ぎりぎりでどうしても不安といった場合は、主催者側に問い合わせましょう。
◆表紙の綴じ方
重ねる順番としては「表紙」なので一番上です。
一枚目に表紙、二枚目から三枚目にあらすじや人物表、次に本文開始といったやり方です。
※特殊な綴じ方が指定されていないか、応募要項をチェックすること
原稿の綴じ方についてはこちらを参照ください。
おわりに
自費出版などは自分自身で完結しているものなので、独自に丁寧に作りこんだ表紙を作っても構わないでしょう。
むしろ本の「顔」となる部分なので、クラウドワークスで専門のデザイナーに頼んだり、あるいはフリー素材を利用して時間をかけて作り上げるのもいいかもしれません。
しかし文学賞や公募などの投稿では、最終判断は出版社などの主催者側にあります。
事前に採用目的や出版用の宣伝戦略を考えられている場合もあり、投稿原稿はあくまで世間に出る一歩手前の段階で判断を仰ぐものです。
そのためあくまで仮の表紙で十分なわけです。
表紙は付けることでより小説らしい体裁になり、原稿としての個別の整理がしやすくなります。
そうした点を理解した上で表紙作りに取り込めば、自ずから必要な部分の判断もできてくるのではないでしょうか。