
文:H.N
シナリオは勿論内容が大事ですが、その前に書き方の基本ルールがあります。
何故かというと、そもそもシナリオはそれ自体完成品ではなく、あくまで設計図だからです。
監督や役者など多くの人が読みます。その為に、皆が等しく理解出来るように共通のルールがあり、それを身に着けておくことも重要です。
以下に順を追って説明致します。
1.表紙
真ん中に大きくタイトルを書いて、左下に作者名を書くのが基本です。
但し、コンクールによって色々決まりがあるので、それに従って下さい。
2.登場人物表
人物名と年齢、その下に職業や主役との関係性などを簡潔に書きます。
順番は主役→準主役→脇役→ちょい役と、重要な順です。
ちょい役は『店員』とか『学生A』で構いません。
セリフのない通行人などまで書く必要はありません。
3.本文
本文は A.柱 B.ト書き C.セリフ の3つで構成されます。
A.柱
場所と時間を現します。
頭に〇をつけて、場所を書きます。
時間が『朝・夕方・夜』のときは場所の下に(夜)のように書きます。昼間の場合は不要です。
場所が変わるときは、一行開けて次の柱を書きます。
カメラを置く位置の指定でもあるので、具体的に書きます。
例)
『〇学校・全景』→『〇同・1年2組・教室前』→『〇同・教室内』
『同』というのは前の場面と同じ学校という意味です。
B.ト書き
場所や人物や動作の説明を書きます。
原稿用紙には上3文字開けて書き、改行した場合も揃えます。
初登場の人物はフルネームと年齢も書きます。
人物が 2 度目以降の登場の場合、男性は名字、女性は名前で表記するのが一般的です。しかし、兄弟など、同じ名字のときは男でも名前にするといった臨機応変で構いません。
特に名前やキャラクターを設定してないちょい役の場合。
例えば学校のシーンでは『体育教師と学生たちが体育の授業をしている』という書き方で良いです。
必要なければ学生が何人いるとか、体育教師が男か女かまで書かなくて良いです。
最初どこまで書くか 1 番迷うのがト書きだと思います。
そこは「必要なことだけ書く」としか言えません。
例えば『赤い服を着てた』と書いたら、のちにそれが伏線にならないといけないのです。
上記の例で『体育の授業』とだけ書いてますが、もし主人公とライバルがバスケ勝負をする、という展開になるのなら『体育の授業でバスケが行われている』まで書きます。
注意点
ト書きに書いてはいけない代表的なことを表記します。
a.心理描写
『そのとき怜奈は笑いながら心で泣いていた』なんて書いても、心の中はカメラに映りません。
前後の展開で説明しなくても視聴者に分かってもらうのが、シナリオライターの腕の見せ所です。
b.関係性
『2 人は親子』と書いても映像にはなりません。
子供が『パパ』と呼んでも、イマどきは本当のパパなのか?
ナレーションやテロップで説明するのも一つの手ですが、多用すると興ざめです。
c.時間がかかる動作
例えば、『怜奈はタピオカミルクティーを受け取り、全部飲んだ』と書いたら、ずっと怜奈が飲んでるところを映してるだけになり、視聴者は退屈します。
可愛い役者さんが怜奈を演じれば、鑑賞に耐えうるかもしれませんけど、それはイメージビデオでドラマではありません。
「この動作はどのくらい時間かかるのか?」を意識して書いて下さい。
C.セリフ
これは文字通り会話です。
まず誰が話してるのか人物名を書いてから「」の中にセリフを入れます。
改行したさいは、頭 1 文字開けます。
セリフは、シナリオライターの力量が1番問われると言われています。
悪い例)
「私は昨日食べた生タピオカにあたってお腹が痛い」
→これでは英会話の訳みたいで、リアリティがありません。
「痛い!お腹やばいよお!昨日の生タピ、あたっちゃったかも」
→こちらの方がまだ自然な会話に聞こえると思います。
だからと言って、完全な日常会話とも違うのが悩ましいところです。
普段の会話をそのまま再現しても、話があちこちに飛んで、何が言いたいのかよく分からないことが多いと思います。
セリフもト書きと同じで、必要な内容だけ書きます。
以上がシナリオ原稿を書く上での基礎になります。
シナリオのルールは最初は面倒に感じるかもしれません。
しかし、慣れれば慣れるほど、その奥深さが分かって面白くなると思います。
とにかくまずは実際に書いて要領をつかむことです。